父親ということ

日曜日。ふと、ブックオフの新書コーナーに立ち寄ると、目に留まった本があった。『娘が東大に合格した本当の理由』

これが立ち読みをしだすと止まらない。ぐいぐいと引き込まれた。電車で人目をはばからず泣き、家でもひとり泣いた。百ます計算などの陰山メソッドと言われる手法で有名になりながらも、自らの家族に手をかけられない日々。

学力低下問題について発言していると、多くの方は熱心に聞いてくれる。その目はときに熱っぽさを感じるほどだ。だが聞いている人も冷静になってくる。そしてやがて疑問を持ち始める。
「早寝早起き朝ごはんなど、家庭のことをおっしゃいますが、あなたのお子さんはどうなんですか?」
いやな質問だ。だがそう心のなかで思ってはみても、私がいやがるのはわかるので、百人のうち九十九人はその疑問を飲み込んでくれる。だが百人にひとり、疑問をそのまま口にする人がいる。
「ところで、陰山先生のお子さんはどうなんですか?」
この質問には何度か冷や汗の出る思いをした。

教育者としての顔、そして、いち親としての顔。教育という分野の仕事をする限り、双方が影響せざるを得ない。わたしがクライアントにITの導入を勧めるのと、自社のITの取り組みを語るのとは、比べるまでもなく教育は重い。家族と比較されるのだ、

メディアに取り上げられるようになった陰山メソッドは、陰山氏に有名税として振りかかり、苦悩を与える。しかし、そのなかでも絶えず家庭のことを考え、決断をしてきた。陰山氏に与えられる重責、家族の別居生活、娘の東大受験発言、娘の浪人、そして東大合格。それぞれのストーリーの中で陰山氏がどう考え、どのように行動したのか。
子供を持つ父親として、何が出来るか、父親として子供にどのような影響を与えられるか、ということを陰山氏の実体験から学ぶことができる。

テレビに出ている教育者としての顔ではなく、ひとりの父親。このような独白にこそ、親近感が沸き、テレビから学ぶことよりも多くのことを学ぶことができる。子供を育てている父親、将来子供を育てるであろう男性におすすめ。

新書を読んだあとにこの本を読むとまた理解が深まる。わたしはブックオフで同時に購入しました。