企業再生プロフェッショナル

三枝匡3部作が経営コンサルタントの入門書、必読書だとすれば、こちらは、再生コンサルタントの入門書。間違いなく、前者の三枝匡3部作を意識して書かれていると言っても過言ではない。

この本は、コンサルタントの中でも企業再生分野に特化し実績をあげているアリックスパートナーズの事業を小説化し、再生コンサルの入門書としている。アリックスパートナーズは、米ではGMの再生や、日本では解体後のライブドアの再生や日本航空に関わってきた実績を持つ。まさに、再生コンサルの頂点と言っても過言ではない。その彼らが本気で書いた本だから面白くないはずがない。

近年、「群を抜いている」と見られてきた日本企業の「ものづくり力」が危機に瀕しているようだ。ある年の関連する雑誌記事を見ると、「リコールが過去最悪のペースで急増」「電子化偏重、人間軽視で開発現場から崩れる製造業」「品質神話の崩壊」「相次ぐ偽装発覚」といった見出しが、各所で躍っていた。
(中略)
原因として挙げられるのは、生産現場に安易に「効率優先」「成果優先」の考え方を持ち込んだことだ。その結果、生産現場を支えてきた高いモチベーション、工夫する余裕、蓄積されてきた現場の暗黙知といった「ものづくり力」の基盤が崩壊してしまったのである。経営陣には本来、「効率」「成果」の実現と「ものづくり力」をバランスさせる管理技術が求められている。この点の重要性や、なすべきことを理解している企業は予想外に少なく、理解している企業との格差は拡大しているのである。

本書のあとがきに、日本の製造業への提言が簡単に書かれているのだが、まさに今この瞬間に起こっている問題である。しかも、トヨタである。