私の仕事術‐松本大

ゴールドマンサックスの最年少パートナーを経て、マネックス証券を起業した松本大さんが自身の仕事術について語る。

概要

1.コミュニケーション

コミュニケーションとは、相互理解である。相手が思っていることを理解する、自分の考えを上手く相手に伝えること。話をする、報告をするだけでは、単なるカンバセーションである。そのために、

  1. 「絶対、相手にわかってもらおう」という強い意志を持って会いに行く。
  2. 目的を明確に最初に伝える。

の2点が大事である。

2.時間感覚を持つ

全ての価値というのは、時間軸を伴う座標軸の中にある。いくら中身がよくても締め切り時間に間に合わないものは論外。アイデアは思いついた瞬間に最高の価値がある。そのために、

  1. 将来予想される価値を現在の価値に換算して考える。(例えば、今は1の価値しかないものだが将来100の価値になるものと、今も将来も10の価値のものを比較する。
  2. 判断スピードをあげる。正解率51%で良いから判断のスピードを上げて、判断の回数を増やす。
3.大量の情報と接する

大量の情報と接することで、偏らない情報を手に入れることができるので、判断の間違いを少なくできる。

4.ビジネスでの心構え
  1. イデアマンより行動する人になる。思いついただけでは、ビジネスにならない。実現に向けて、しっかり考え、工夫を凝らして結果を出すことが大事。
  2. 信頼度をあげる。信頼関係は崩れるときは一瞬である。できないことをできます、と言うよりも、素直にできませんと言う。信頼を決して失わない。
  3. 無駄な仕事を探して切り捨てる。新しい価値のあるものを探し続ける。
5.悩んだ時の処し方
  1. 幸せは自分の心が決める。
  2. 失敗の仕方に気をつける。転ぶな、と思ったときは、致命傷にならない方に転ぶことを強く意識する。あらかじめ、クッションのある方に転ぶことを準備しておけば、立ち直れる。
6.起業について
  1. 途中でくじけない、完璧主義者にならないために、ベストよりもベターを目指す。
  2. 目標を遠くに設定する。遠くに設定すれば、近いところのブレは気にならない。その中で、ある程度中期的、短期的な目標を設定する。
7.アクションを起こす
  1. 量をこなす。量をこなすために無理をするときは、主体性をもつ。嫌々やらない。
  2. 自分の限界をセットしない。

感想

正直に言って、一見したところ、真似できそうです。ただし、この全てを常に意識して行動することが難しい。おそらく松本さんは、これらの項目が自分自身の規範として、身体に染みついているのだと思います。規範の中身はどれも一般的であり、目に新しいものはそこまでないのですが、この本の中から感じ取れる論理的思考がすさまじい。
これらの規範全てに背景があり、理由があり、その上に行動がある。その論理がこの本の中にあります。やさしい文章ですいて、かつ、伝わる文章。論理的であるがゆえに、伝わる文章。


規範そのものよりも、簡潔にわかりやすく書く技術の素晴らしさを知れる書籍です。やさしい文章が体にすーっと入ってくるので、新入社員に特にお勧めです。