東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

既に読んだり、見たりしている人も多いだろうか。映画、ドラマにもなり大ヒットしたリリー・フランキーの自伝的小説。大人、に効きます。
テンポの良い文章と誰にでも共感できる内容で、とても面白い。オカンの愛情を受けながら育った人生を、物心の付くころから、東京に出て、東京で一緒に暮らすところまで、テンポよく楽しく描く。そしてラストは涙なしには読めない。久しぶりに本を読んで泣いた気がします。


多くの小説は、主人公への感情移入で成り立つことが多いのだけれども、この小説はそうではなく自分自身(読者自身)の「オカン」への感情を湧きあがらせるフラッシュバック作用を持つ、といって良いだろう。自分と母親の思い出、、、勇気づけられた言葉、傷つけてしまった言葉が思い出とともによみがえる。「ボク」という人が生まれた以上、ボクとオカンの話は、リリー・フランキーの東京タワーの中の話だけにとどまらないのだから。
私も御多分にもれず母親と久しぶりに連絡をとった。他愛のない話と、先日出た少しばかりの賞与でプレゼントを買ってあげることにした。この本を読めばわかる。マザコンでいいじゃねえか。別に度を越したマザコンじゃないんだしな。

五月にある人は言った。
どれだけ親孝行をしてあげたとしても、いずれ、きっと後悔するでしょう。あぁ、あれも、これも、してあげればよかったと。

文中に時々はさまれる、「五月にある人は言った」のフレーズがいつまでも心に残り続ける。